たむらぱん - ココ
高楼方子 "ココの詩"
オレンジの実のなる林をくぐり、左からおしよせてくる何頭もの馬、もっと先へすすんでゆこうとする馬のお尻、つき立っている何本もの槍……そしてその中央には、おどろいて立ちあがった白い馬と、肩に槍を受けた馬上の騎士がいました。そしてそれは、はげしい合戦の絵でありながら、途ぎれたままで年経てしまった昔むかしの物語のように動きをやめ、人も馬も木々も景色も、何もかもが、しらっときちんと、けれど妙にずしりと、その場にとどまっている、そんな絵なのでした。でもそのくせ人を魅きつけずにはおかず、いらだたしいような思いにかられて、もう仕方なしに、もやのような何かをかき分けて、さらに目をこらして絵を見れば、ついに、そこにいきづく、ひそやかな息吹に、人は出会わずにいられないのです。はるかなはるかな時をこえ、深い深い地の底から、かすかにかすかに、ドドンコドドンコ、ドンドンドドンコと戦いの音さえ聞こえてくるようでもありました。
The Battle of San Romano - Wikipedia